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自決鼠(スーサイズラット4/4

 投稿者:DTO  投稿日:2017年 8月13日(日)03時33分30秒
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  一方、人間側も手をこまねいていた訳ではなかった。
街中に点在する繁殖部屋を見取り図と照合してしらみ潰しに探し回り、一つ一つ確実に発見、殲滅して行く。
自決鼠の水に強い性質を警戒し、広大な下水道の捜索に三週間もの時間を割いてしまったが、
ついに最後の未照合エリア、あの巨大な変異種のいる倉庫まで辿り着いた。
最初の侵入から三週間、成長の早い自決鼠なら、既にかなりの数に殖えていてもおかしくない。
更に念を入れて近隣からの援軍を取り付けた上で、街中の兵士が十重二十重に小屋を囲む。
その目の前で、突如小屋の外壁が内側から吹き飛び、中から大量の自決鼠が姿を現した。
既にかなり繁殖しているらしく、幼い個体や大型化したり四肢が増えたりした変異種も見られる。
最初の爆発から、しばらく自爆はないと判断した兵士達は自爆対策に漁師達から借りた
網で直ちに群れを取り囲んで動きを封じる。
次の瞬間、外壁の穴から例の巨大種が出現し、長大な腕を地に着けて前傾姿勢を取ったかと
思うと、何か吐き出して拘束された群れごと兵士達を撃ち貫く。
吐き出したのは、消化しきれなかった獲物の骨や毛の塊―ペリットだ。
それを通常種が自爆に使うガスで空気銃の様に打ち出し、壁や兵士達を撃ち貫いたのだ。
射線上にいた兵士と共に少なくない個体が致命傷や重傷を負い、周囲を巻き込み一斉に自爆した。

そこから先は、大いに混戦となった。
巨大種は周囲の仲間をその巨腕で掴むと、敵陣のガスの薄い箇所に放り込み、
それを射線上の敵もろとも狙撃し、巻き添えに自爆させる。
なまじ大規模な布陣で臨んだばかりに、この戦術は非常に功を奏した。
だが如何せん多勢に無勢、巨大種をはじめとする変異種達も十分な数を準備できなかったこともあり、
多大な被害(援軍含む参加者262人中軽傷139人・重傷56人・死者9人)を出しつつも、
早朝から始まった駆除作戦が夕暮れ頃にはおおよそ完了した。

最後に残った巨大種の頸部が、援軍としてやってきた人虎族傭兵の山刀に深々と切り裂かれて
血煙を上げる。
どう、と微かな地鳴りを建てて倒れ込むそれを見て、誰が言うともなく

「こんな化物が一匹で良かった」

と胸をなで下ろした。
しかし、その感想が正しかったことを一行はすぐに別の形で知る事となる。
兵士の一人が、母胎として囚われていた少女達を救出しに倉庫の中に入った途端、
不意に何者かに撃たれたのだ。
幸い肩当てをかすっただけで怪我は無く、衝撃力も大したことは無かったが、しかしそれは、
彼らが今日、厭と言うほど目にし、味わった恐怖の形をしていた。
倉庫の床には、数体の幼体に混じって、明らかにあの巨大種の姿をした小さな自決鼠が這いずり、
幼いながらにあの射撃体勢を取って、侵入者を威嚇するように睨め付けていた。
 
 
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